「自由進度学習」はデメリットの塊!今の教育制度ではまったく通用しない!その理由を説明します!

Pocket

「一人ひとり」に合わせた「個別最適な学習」の推進が始まっています。そこで今回はその中の方法の一つ、「自由進度学習」についてです。箕手氏が提案している学習です。そんな「自由進度学習」、はっきり言って今の教育制度ではまったく通用しません。デメリットの塊です。流行に流されてこの手法を取り入れたら、学力下位の児童の学力は崩壊します。その理由について以下にて説明します。これから「自由進度学習」を行おうと考えている方の参考になれば幸いです。

スポンサーリンク

目次

「自由進度学習」のデメリット その1 学力がつかない

 

「自由進度学習」のデメリットの1つ目は、「学力がつかない」という点です。これ公教育では、一番大切です。なぜなら全員に力をつけることが「公教育」の目的だからです。「自由進度学習」は「先に進みたい子」にとってメリットはあります。自分にあった問題にどんどん挑戦できるからです。しかし、クラスに必ずいる「普通より学力が弱い子」はどうでしょう。この子たちは明らかに学力が落ちていきます。それは「自由進度学習」のスタイルにあります。

「自由進度学習」は、「目標」を決めたあと、「自分で教科書を読み進め」、「自分で答え合わせ」をし、「振り返り」をするスタイルです。この「自分で教科書を読み進め」、「自分で答え合わせ」がとても厄介です。学力が高い子は、「自分で読み進める」ことも、「答え合わせ」をすることもできます。しかし、学力が低い子は、この、「教科書を自分で読み進める」ことができないのです。また、「自分の力で問題を解こう」という意欲も低い子が多いでしょう。結果ほとんど問題を解かずに解答を見てしまうため、「答え合わせ」はただの早めに諦めてのカンニングになってしまいます。これではどこにその時間の「ポイント」があるのかわかるはずもありません。どの子も授業が終わるとノートがびっしり埋まっています。教科書を写すだけですからね。「これはすごい」と思いましたが、テストをすると結果は明かです。50点満点のテストで、一人が30点を取っただけで、あとの子たちは20点以下の結果でした。これは明らかに学力が低い子の切り捨てです。「学び方を学ぶ」と綺麗事を並べていますが、学力の低い子には力は付きません。それを教師が主導で進めていいのでしょうか。これが一つ目の理由です。

 

 

「自由進度学習」のデメリット その2 今の文科省の仕組みが同じ方向を向いていない

 

続いての理由は、「今の文科省の仕組みと同じ方向を向いていない」です。日本の学習は「学習指導要領」に記された内容を全て行うことになっています。

学習指導要領は「基準性」を有することから,学習指導要領に示している内容は,全ての児童に対して確実に指導しなければならないものであると同時に,児童の学習状況などその実態等に応じて必要がある場合には,各学校の判断により,学習指導要領に示していない内容を加えて指導することも可能である(第1章総則第2の3(1) ア及びイ)。

(引用元:【総則編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 |文部科学省

しかし「自由進度学習」では、自分の学習進度に合わせることになっています。矛盾していませんか?自分の学習進度に合わせるなら「台形の公式」までたどり着かなくてもいいはずです。しかしやらなくてはならないですよね?本校でも「自由進度学習」を行った学年で、公開授業までは「自由進度学習」を行っていたのに、最後はやらなければならない内容まで到達していなかったため「一斉授業」をしていた教員がいました。これは本末転倒です。人に見せるためにやる「自由進度学習」など愚の骨頂です。

その公開授業で参観していた教員から、

「単元内で最後まで学習が到達できなかった子の指導はどうしていますか。」

という質問が公開した教員に出ました。

公開した教員は、

「家庭で自分で学習させます。」

と堂々と答えていました。考えられますか?教員が自分のクラスの子どもの学習が間に合わないから家庭に任せるのだそうです。これは「自由進度学習」ではなく、責任の放棄です。これを推進する箕手氏の理由も疑問です。

「履修主義か習得主義か。自由進度学習は習得主義です。」

と語っていました。学習進度が間に合わない子の学習を家庭に任せることが習得主義と言えるのでしょうか。

何より、「学習指導要領」で「全ての児童に対して確実に指導しなければならない」と書かれている以上、「履修主義」なのです。「履修主義か習得主義か」の議論はありません。

まずは文部科学省が「学習指導要領の内容は参考程度」と発信しなければ、今言われている「個別最適な学習」も成立しません。これが「自由進度学習」を行うべきではない二つ目の理由です。

「自由進度学習」のデメリット その3 教員の人数が足りない

 

「自由進度学習」のデメリットの3つ目は、「教員の人数が足りない」という点です。「自由進度学習」をやってみて、教員が最低でも3人必要であるということに気づきました。一人目は「A学習能力の高い子たちのグループ」に。二人目は「B学習能力の中度の子たちのグループ」に、最後は、「C低い子たちに」です。なぜこれだけの人が必要になるのか。同じクラスの中でこの子たち全てに個別に対応することは不可能だからです。実際にやってみましたが、同じ説明を6〜10回することになります。まずは先に進んだAグループからの質問。続いて時間差があってからBのグループの子たちからの同じ質問といった感じです。

「教師なら個別に何度も質問に答えてあげなさい。」

と言われそうですが、一日だけならまだしもそれが200日続いたらもちません。それに比べ一斉授業なら一度で済みます。学習能力の違う3つのグループを同じ部屋にしているからこのような事態が起きるのです。3つのグループを違う部屋に分け、それぞれのペースで進めて行く。これが本当の個別最適な学習の形になります。

例えば、Aグループはもしかしたらほとんど質問が出ないかもしれません。この子たちには「自由進度学習」を進めても構いません。そのためAグループの担当の教員は、AIドリルや新たな学習問題を探してくる情報技術に優れた教員が適任かもしれません。

Bグループには通常の一斉授業がいいでしょう。今までの教員・授業で対応できます。そこで同じ学習能力の子同士相談しながら問題に取り組んでいけば、「協働的な学習も深まる」と考えられます。ここにAグループの子やCグループの子が混ざるから授業がスムーズに進まなくなるのです。このグループの子たちに「自由進度学習」は必要ありません。教師がこれまで通りポイントを噛み砕いて説明する方が効果的だからです。教科書の内容に書かれていることだけでない解説が教師から説明される方が深い理解につながります。

 

 

Cグループの子たちには、「学習指導要領は参考までにして、個別に学習問題に取り組ませる」ことが大切です。特別支援の教育のように個別に教科書を用意したり、問題を用意したりできる教員が必要です。AI学習で進んだり戻ったりする学習が必要です。

そのため「自由進度学習」で提案している、「自分で教科書を読む」ですとか、「目標を書かせる」ですとか、「振り返りを書かせる」とかという活動は必要ありません。「漢字が苦手な子」は教科書が読めませんし、「文章を書くことが苦手な子」は目標も振り返りもまともに書けません。そんなことができるなら苦労はないからです。時間だけが無駄に進み、結局学習内容が進まず、家庭で足りない部分を学習させることになります。これだけは絶対にしてはいけません。

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか。「自由進度学習」が今の日本の「学習指導要領を全て行わなければならない」システム的にも、「能力に沿った指導を行う教員の数」という組織的にも、ましてや一番大事な「子どものため」にもなっていないことが理解していただけたのではないかと思います。「学習能力の高い子」たちが待たされる授業は変えていくという趣旨はわかります。しかし公教育にいる子たちは「学習能力の高い子」ばかりではありません。「学習能力の低い子」を切り捨てるような指導は「個別最適な学習」ではありません。

 

スポンサーリンク
スポンサーリンク