小学校5年生の物語文の中に、「なまえつけてよ」があります。皆さんはどのように授業を進めていますか。今回は「なまえつけてよ」を心情曲線で話し合った授業を紹介していきます。これから授業を行おうと考えている方の叩き台にしていただけたらと思います。
目次
「なまえつけてよ」を読み、作品を捉える
まずは教師が、「なまえつけてよ」の作品の特徴を捉えます。
登場人物は、
「春花」「勇太」「陸」「牧場のおばさん」「近所のおばさん」です。
作品のに対する作者の思いは、
人の気持ちと向き合い、自分にできることは何かを考え、ときには思い切って実行することは、生きていく上で大切なことであり、喜びの源ともなることです。この作品では、とくにその点を表したいと思いました。楽しんで読んでいただければ幸いです
この「人の気持ちと向き合い、自分にできることは何かを考え、ときには思い切って実行する」はこのお話の「対役」である「勇太」の行動だと思われます。この作者の思いがこの作品の主題であると考えます。
「なまえつけてよ」の心情曲線は、「勇太に対する春花の気持ち」で追う
「なまえつけてよ」のクライマックスの場面は、「春花」に「勇太」が紙で作った「なまえつけてよ」と書いた「馬」を渡し、春花が「ありがとう」と心の中でつぶやく場面です。そのときの、「春花の気持ち」を考えます。
「春花」は、「勇太」に対して「親しくなるきっかけ」がつかめずにいます。子馬の名前をつける話をしても興味を示さず、「もう行こう。」と行ってしまいます。それを見た「春花」は、「なによその態度。」と言いそうになるくらい怒ってしまいます。関係はよくない状態です。
しかし、「春花」が一生懸命考えた子馬の名前がつけられなかったため、がっかりしてしまう場面では、最後には勇太に対して「ありがとう」と心の中でつぶやく状態に戻っています。そんな心情の変化を読み取ります。
そこでこのお話では、「春花」を「中心人物」として考えていきます。そこで心情曲線は、「春花の気持ち」を書き込むワークシートにします。使った心情曲線は以下のファイルです。上のスペースには教科書の本文を貼り付け、文章のどこで曲線が変化するかを曲線で示していきます。
「春花」は、「勇太」に対して親しくしようと思っていましたが、「勇太」のそっけない態度を見て怒ってしまう状態でした。それが最後には、勇太に「ありがとう。」と心の中でつぶやく状態になっていることがわかります。どこかで「勇太はとは仲良くできない」から「勇太ありがとう」に変わったことを確認して、「どこで変わったのだろう。」と問い心情曲線のワークシートを配ります。
「春花」は「勇太」に対して「なによその態度。」と心の中でぐっとこらえている状態だから、当然曲線は「勇太とは仲良くできない」の場所にあるはずです。
クライマックスの場面では、子どもの中には、「ありがとう」曲線をいろいろな場所で書く子がいます。そこで2つの曲線を取り上げ学習問題とします。
クライマックス場面の心情曲線で分かれたのは、
A「受け取ったものを見て、」の部分から「ありがとう」の場所まで上がる曲線と、
B「勇太ってこんなところがあるんだ。」の部分で「ありがとう」に上がる曲線です。
「なまえつけてよ」の主発問は、「春花の気持ちの曲線はどれが正しいか」で話し合う
どちらの答えが正しいと思うか、自分の考えをノートに書きます。書き終わったら、A 、B のどちらの考えかはっきりさせるため、黒板にマグネットを貼って立場をはっきりさせました。
2つの意見について話し合いを行います。「春花」の勇太に対する「ありがとう」の気持ちは、
A「受け取ったものを見て、」のときに高く上がるのか、
B「勇太ってこんなところがあるんだ。」で高く上がるのか、どちらの場面かです。
Aでは、賛成意見として、
「勇太が落ち込んでいる春花のためにプレゼントをくれたから」や
「春花が受け取って『はっ。』としているから」
という意見が出てきました。
一方Bの賛成意見では、
「勇太のやさしいところに気づけたから」や、
「こんなところの『ところ』は『優しさ』のことだから」
という意見が出ました。
Aに対する反対意見として、
「プレゼントがどんなものかまだわからない」や
「変なものを渡してきたかもしれないから」
という意見が出ました。
Bに対する反対意見として、
「今までうまく話せなかった中で、プレゼントをくれたことがもう嬉しいことだから」や
「受け取っていろいろ表や裏を見ていく中で喜びは増えているから」
という意見が出ました。
立場を決めて話し合いを行ったので、最後には解を示しました。Aの子たちの、「今まで自然に話せなかった勇太からのプレゼントが嬉しい」を大いに認めた上で、答えBはです。なぜなら、春花の、「勇太ってこんなところがあるんだ」の「こんなところ」とは、こちらから歩み寄っても突き放すような「ぶっきらぼうな冷たい子」だと思っていた「勇太」に、「こんな『優しい』ところ」があるんだという気持ちから出た言葉です。春花はどんな場面からその優しさを受け取ったかというと、紙で作った「子馬」に加え、裏に書いた「なまえつけてよ」の字を見た場面です。名前をつけれずに落ち込んでいた春花を励ましたくて、勇太は「なまえつけてよ」と書き込みました。「せめてこの子馬に一生懸命考えた名前をつけてね。」という思いやりの気持ちがあったから春花にその優しさが伝わったということですね。
きっと勇太には、この春花への行動は大変な行動だったと思います。しかし、「人の気持ちと向き合い、自分にできることは何かを考え、ときには思い切って実行する」ことで相手を元気にすることができるんだねと伝えて授業を終えました。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回「心情曲線」にして立場を決めて話し合うことで、子どもたちは教科書の中身をよく読み、自分の思いを込めた読み込みができるようになったのではないかと感じています。音読劇を見合い交流しあうことも大切ですが、深い読み取りのために、教科書を元に話し合うことも大切な技能です。どんな風に授業を進めようか悩んでいる方にとって、今回の授業の流れを叩き台にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。