小学生、4年生「白いぼうし」の話し合いは心情曲線で!実際に行った発問を紹介します!

Pocket

小学校4年生の物語文の中に、「白いぼうし」があります。皆さんはどのように授業を進めていますか。今回は「白いぼうし」を心情曲線で話し合った授業を紹介していきます。これから授業を行おうと考えている方の叩き台にしていただけたらと思います。

スポンサーリンク

目次

「白いぼうし」を読み、作品を捉える

まずは教師が、「白いぼうし」の作品の特徴を捉えます。

登場人物は、

「松井さん」「紳士」「女の子」「警察」「たけのたけお」「お母さん」「ちょう」です。

 

光村図書 4年国語上より
光村図書 4年国語上より

 

作品の特徴としては、

作品の特徴は、「ちいちゃんのかげおくり」や「おはじきの木」など戦争を描いたものもあり、旧満州で育ち、帰国した経緯、幼少期の経験の影響が感じられる。自身が好きな宮沢賢治の世界とも通じ、日本的なファンタジー作品を多く生み出す。日本の風土や文化に根ざした情緒と親しみやすさが感じられ、上品なユーモアにも包まれて、どこまでも優しい独特な世界観が漂う。母親的な優しさ、温もりと、どうしようもない切なさが共存し、悲劇の中にある本質を、鋭く静かに描き出す視点が、あまん作品の特質と言える。 

白いぼうし(あまんきみこ) – 京都教育大学教育支援ネットワークより

私が問題にしたのは、教室現場でのこの作品の読解(解釈)のなかで、テキストの字句を踏み越えてしまったものがしばしば見受けられる点だった。(中略)

チョウのことばを、「ちょうちょの女の子が、松井さんに感謝している声」とする教師側の解釈、チョウの逃走そのものを「松井さんのやさしい心が、白いぼうしからチョウを逃してやることになり」とする、いわば先走った解釈がいくつも見られる(中略)

実際には松井さんのチョウに対する感情自体はテキストに流れている時間の中には暗示されておらず、また、直接に松井さんに向けられたチョウの気持ちというのはまったく描かれていないのだ。したがって、松井さんがタクシー料金を払わなかったチョウに対して腹を立てたはずだとする子どもの感想は、少なくともテキスト内の語句とは別の要素によってもたらされたものと考えざるを得ない。「よかったね。」「よかったよ。」をチョウが松井さんに感謝している言葉とする解釈も、テキストではこれがチョウ同士の会話として描かれていることを考えると、同様にテキスト外の要因によるものと考えるべきだろう。(中略)

私の解釈によれば、前半の、チョウを捕まえた男の子に対する松井さんの心情を中心とする物語と、後半のチョウの化けた女の子を知らずに目的地まで運んでやった松井さんの物語とは、話型的には、前半が「魔術者がより大きな贈与によって損失を補填してやる物語」、後半が「囚われたものが偶発的な援助によって逃走に成功する物語」とみなすことができる。そしてテキストの字句に依拠するかぎり、この二つの物語は相互に関連させられる必然性はなく、ただ媒介項の松井さんを通して並列的につながっているだけである。つまり前半の物語と後半の物語はそれぞれが独立した価値をもっているのだ。 「あまんきみこ『白いぼうし論2』」より

このような作品論をもとにこの作品の主題を考えると、

「松井さんのどこまでも深い優しさ」や

「松井さんの生き物すべてに対する思いやりによって起こる、不思議な現象(誰にでも起きうることかもしれないファンタジー)」

という思いではないでしょうか。

これらが作品の特徴になります。

 

 

「白いぼうし」の心情曲線は、「松井さん」の「たけおくんに対する気持ち」で追う

 

「白いぼうし」のクライマックスの場面は、「松井さん」が「たけおくん」のぼうしの中に隠れていた「蝶」の代わりに、夏みかんを入れ、その後を想像しながら走り去る場面です。そのときの、「松井さんの気持ち」を考えます。

「松井さん」は、「たけおくん」の帽子の中の「蝶」を偶然にも逃してしまったため、がっかりして肩を落としてしまいます。それが最後にはいつもの松井さんに戻っています。そんな心情の変化を読み取ります。

そこでこのお話では、「松井さん」を「中心人物」として考えていきます。そこで心情曲線は、「松井さんの気持ち」を書き込むワークシートにします。使った心情曲線は以下のファイルです。上のスペースには教科書の本文を貼り付け、文章のどこで曲線が変化するかを曲線で示していきます。

 

白いぼうし ワークシート

 

「松井さん」は、「たけおくんの蝶」を逃してしまったことでがっくり肩を落としてしまいます。それが最後には、いつもの元気で優しい松井さんに戻っていることがわかります。どこかで「蝶を逃してしまってがっかり」から「うれしい(前向きな気持ち)」に変わったことを確認して、「どこで変わったのだろう。」と問い心情曲線のワークシートを配ります。

「松井さん」は偶然にも蝶を逃してしまい、落ち込んでいるのだから、当然曲線は「がっかり落ち込む」の場所にあるはずです。

クライマックスの場面では、子どもの中には、「うれしい(前向き)」曲線をいろいろな場所で書く子がいます。そこで2つの曲線を取り上げ学習問題とします。

クライマックス場面の心情曲線で分かれたのは、

A「おどろいただろうな。」の部分からうれしいの場所まで上がる曲線と、

 

 

B「よかったね。」の部分でうれしいに上がる曲線です。

 

 

「白いぼうし」の主発問は、「松井さんの気持ちの曲線はどれが正しいか」で話し合う

 

どちらの答えが正しいと思うか、自分の考えをノートに書きます。書き終わったら、A 、B のどちらの考えかはっきりさせるため、黒板にマグネットを貼って立場をはっきりさせました。

2つの意見について話し合いを行います。「松井さん」の「うれしい」気持ちは、

A「おどろいただろうな。」のときに高く上がるのか、

B「よかったね。」で高く上がるのか、どちらの場面かです。

Aでは、賛成意見として、

「たけおくんのことを考えて楽しそうに笑っているから」や

「がっかりしている人は笑わないから」

という意見が出てきました。

一方Bの賛成意見では、

「蝶を逃すことができてうれしかったから」や、

「一度女の子がいなくなって不思議に思っているから」

という意見が出ました。

Aに対する反対意見として、

「ここでは笑っているけれど、その後すぐに女の子がいなくなって不安になって探しているから」や

「まだ蝶を逃していないから」

という意見が出ました。

 

Bに対する反対意見として、

「蝶を逃すために松井さんはたけおくんの帽子に夏みかんをいれたんじゃない」や

「女の子がいないことでまたがっかりしたわけではないから。不思議に思っただけ」

という意見が出ました。

立場を決めて話し合いを行ったので、最後には解を示しました。Bの子たちの、「女の子がいなくなって不思議」や「蝶を逃してあげてうれしい」を大いに認めた上で、答えはAです。なぜなら、松井さんの、「ふふふ。」という笑いがこみ上げる行動は、蝶がいなくなってがっかりした「たけおくん」を喜ばせることができると確信したから行った行動です。

また、松井さんは蝶を逃がそうとしていたわけではありません。帽子から逃してしまったのも、突然車の後部座席からいなくなったのも、偶然です。むしろ松井さんは「女の子」が「蝶」であるかもしれないことに気づいてもいない可能性の方が高いです。

また、「女の子」が突然いなくなったことに怒り(無銭乗車)や落ち込んでいる様子も見られません。ただ、「おかしいな。」とぼんやりと蝶を見つめていただけです。がっかりしている人が行う行動ではありません。

そこには、松井さんの人のよさが現れています。つまり、たけおくんの蝶を逃してしまったことには「がっかり」してしまうが、埋め合わせで「お気に入りの夏みかん」を帽子の下に置くことで「たけおくん」が喜ぶ様子を想像してうれしくなれる人。そして、お客さんが突然いなくなっても怒ったり悲しんだりすることなく、純粋に「おかしいな。」でぼっと蝶をながめている人ということです。まついさんの人柄を考えると、たけおくんにお返しができた段階で、松井さんは気持ちが「うれしい」に変化していたと考えるのが自然です。そのためAで「うれしい」に気持ちがガラッと変わったと考えられます。

と伝えて授業を終えました。

 

光村図書 4年国語上 より

まとめ

 

いかがだったでしょうか。今回「心情曲線」にして立場を決めて話し合うことで、子どもたちは教科書の中身をよく読み、自分の思いを込めた読み込みができるようになったのではないかと感じています。音読劇を見合い交流しあうことも大切ですが、深い読み取りのために、教科書を元に話し合うことも大切な技能です。どんな風に授業を進めようか悩んでいる方にとって、今回の授業の流れを叩き台にしていただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

スポンサーリンク
スポンサーリンク