小学校2年生の物語文の中に、「スーホの白い馬」があります。皆さんはどのように授業を進めていますか。今回は「スーホの白い馬」を心情曲線で行った授業を紹介します。これから授業を行おうと考えている方の叩き台にしていただけたらと思います。
目次
「スーホの白い馬」を読み、作品を捉える
まずは教師が、「スーホの白い馬」の作品の特徴を捉えます。
登場人物は、
「スーホ」「白い馬」「おばあさん」「王様」「家来」
です。作者の大塚勇三さんは翻訳家ですので、実際の作者とは異なります。
「スーホの白い馬」は、スーホが白い馬と出会い、王様に奪われてしまってもお互いが会いたいと思った結果、王様の元から白い馬が帰ってくるものの、力尽きてしまうというお話です。スーホがその後、死んだ白馬から馬頭琴を作ることで、白馬を思い出しながら曲を奏でるという内容から作者が伝えたい主題は、
「人間と生き物は心を通じ合わせることができる」や
「楽器(物)になっても、心がある」
「人間の思いは生き物や物に届く」
ということではないでしょうか。
「スーホの白い馬」の心情曲線は、「スーホ」の「白馬がいなくなっての気持ち」で追う
「スーホの白い馬」のクライマックスの場面は、「スーホ」が傷だらけの白馬に出会い、白馬が死んでしまう場面です。そこでこのお話では、「スーホ」を「中心人物」として考えていきます。そのときの、「スーホの気持ち」を考えます。
そこで心情曲線は、「スーホの気持ち」を書き込むワークシートにします。使った心情曲線は以下のファイルです。上のスペースには教科書の本文を貼り付け、文章のどこで曲線が変化するかを曲線で示していきます。
「スーホ」は、「白馬」に「会いたい。悲しい。」という気持ちをもっていたこと。それが最後には、「自分のすぐわきに白馬がいるような気がしました」と白馬に対する気持ちの変化が出ている様子がわかります。どこかで「白馬に会いたい。会えなくて悲しい。」から「自分のすぐわきに白馬がいる」に変わったことを確認して、「どこで変わったのだろう。」と問い心情曲線のワークシートを配ります。
「スーホ」は王様に白馬を奪われ、白馬に対して「会えなくて悲しい」と思っているのだから、当然曲線は「悲しい」の場所にあるはずです。
クライマックスの場面では、子どもの中には、「スーホの白馬に対する気持ち」曲線をいろいろな場所で書く子がいます。そこで2つの曲線を取り上げ学習問題とします。
クライマックス場面の心情曲線で分かれたのは、
A「でも、やっとあるばん、とろとろと」の部分から「白馬がそばにいてうれしい」の場所まで上がる曲線と、
B「スーホはどこへ行くときも、この馬頭琴をもっていきました。」の部分で「白馬がそばにいてうれしい」に上がる曲線です。
「スーホの白い馬」の主発問は、「スーホの気持ちの曲線はどれが正しいか」で話し合う
どちらの答えが正しいと思うか、自分の考えをノートに書きます。書き終わったら、A 、B のどちらの考えかはっきりさせるため、黒板にマグネットを貼って立場をはっきりさせました。
2つの意見について話し合いを行います。「スーホ」の「白馬がそばにいてうれしい」という気持ちは、
A「でも、やっとあるばん、とろとろと」の部分から「白馬がそばにいてうれしい」の場所まで上がるのか、
B「スーホはどこへ行くときも、この馬頭琴をもっていきました。」の部分で「白馬がそばにいてうれしい」に上がるのか、どちらの場面かです。
Aでは、賛成意見として、
「ゆめを見たときに白馬に会えたから」や
「体をすりよせてきたから」
「『そんなにかなしまないでください。』と話してくれたから」
という意見が出てきました。
一方Bの賛成意見では、
「死んでしまったけれど白馬の楽器ができたから」や、
「いっしょに出かけられたから」
「草原をかけまわった楽しさを思い出したから」
という意見が出ました。
Aに対する反対意見として、
「スーホは泣きながら楽器をつくったと思う」や
「ゆめに出たけどゆめはきえちゃうから」
「まだ楽器はできていないから」
という意見が出ました。
Bに対する反対意見として、
「もう白馬にゆめで会えたから」や
「白馬が楽器の作り方を教えてくれたから」
「白馬が作り方を教えてくれた楽器のおかげで喜べているから」
という意見が出ました。
立場を決めて話し合いを行ったので、最後には解を示しました。Aの子たちの、「ゆめの中で白馬に会えた。楽器の作り方を教えてくれた。」を大いに認めた上で、答えはBです。なぜなら、「悲しさと悔しさ」で眠れなかったスーホは、やっとある晩に眠りについています。その場から動けないくらい悲しくて、悔しかったのです。夢を見て元気が出たなら、すぐに動けるようになるはずです。しかしスーホは夢から覚めたあとは、夢中になって白馬の教えてくれた通りに楽器を作っています。夢中とは、「熱中して我を忘れるほど」の状態だったのです。夢で白馬に会えたことでうれしいのなら、夢中で楽器を作る必要はありません。すでにどこかへ一人で行ってもいいのです。しかし、スーホは起きてすぐに楽器を作ります。「我を忘れて」を楽しくて熱中しているのか、白馬に会いたい一心で熱中しているのかを考えると、後者の方が適切です。そう考えると、「白馬に会いたい一心で白馬に教えてくれた通りに楽器を夢中でつくり、楽器が完成したことでまた一緒にいることができた」と考えることができます。
「白馬は死んでしまったけれど、スーホと白馬がお互い会いたいと思った結果、楽器になることでずっと一緒にいられるようになったんだね。動物と人間でも、思いあっていれば、心は伝わるんだね。」と伝えて授業を終えました。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回「心情曲線」にして立場を決めて話し合うことで、子どもたちは教科書の中身をよく読み、自分の思いを込めた読み込みができるようになったのではないかと感じています。音読劇を見合い交流しあうことも大切ですが、深い読み取りのために、教科書を元に話し合うことも大切な技能です。どんな風に授業を進めようか悩んでいる方にとって、今回の授業の流れを叩き台にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。