平成30年度から「道徳」の教科書ができ、教科書の内容を行うことになりました。当然道徳の授業は教科書の内容を行うことになると思いますが、教科書の内容ってジレンマ教材ではないことが多く、授業の盛り上がりを考えると使いづらいと感じませんか。「でも教科書の内容をやらないと。」と考えがちですが、実は教科書の内容は必ずやらなくてはならないわけではありません。教科書の内容でなくても、同じ価値でよりその価値を高められる教材であれば他の教材でもいいのです。
では,教科になれば道徳科の授業において教科書を必ず使用するのかといえば,一年間の全ての授業において教科書を使用しなければならないという拘束性はないと思われます。その理由として二つが考えられます。一つは,学校教育法第34条第2項に「前項の教科用図書以外の図書その他の教材で,有益適切なものは,これを使用することができる。」とあり,児童生徒の道徳性を育むことに,より効果がある場合は,教科書以外の教材を活用することが可能であることを明示しています。…
詳しくは以下のサイトをご覧ください。
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/tokubetsu_dotoku/column/qa/vol17.html
そこで今回は、「生命尊重・自然愛護」をオリジナル教材で実践してみるという提案です。題材は「ペットの命はだれのもの」です。実際に授業で行った内容を紹介します。教科書の内容を進めるだけで大変なのはわかりますが、ジレンマ教材になる題材ですので、「生命尊重・自然愛護」の授業の進め方の叩き台にしていただけたらと思います。
目次
ジレンマ教材で話し合いその1 題材「ペットの命はだれのもの」を読む
まず「ペットの命はだれのもの」を読み登場人物と出来事をおさえます。内容は以下の通りです。
登場人物は、「あきほさん」
「管理人さん」
「ペットの犬」
です。
出来事は、あきほさんは知り合いのおばあさんから生まれたばかりの子犬をもらいました。一年がたったころ、アパートの管理人さんがあきほさんの家にきました。管理人さんは、
「あきほさん、このアパートはペット禁止です。ペットを飼うのをやめるか、あなたが出ていってください。」
と言いました。あきほさんはお金があまりないためアパートを出ていくわけには行きません。しかし、かわいい子犬とはなれたくありません。でも、生きていくために、子犬と離れることにしました。もらってくれる人を探しましたが見つからず、あきほさんは子犬を施設に持って行くことにしました。
その施設では、1週間新しい飼い主を探すため檻に入れておきます。しかし、1週間で新しい飼い主が見つからない場合、息が吸えなくなる部屋に入れて殺してしまう施設でした。あきほさんは子犬をあずけると泣きながら帰って行きました。
ここまでをおさえて学習問題に入ります。
ジレンマ教材で話し合いその2 立場を決めて話し合う
「ペットの命はだれのもの」の登場人物や話の流れについて確認が終わったところで、「あきほさんに賛成か反対か」を問いました。ノートに考えを書かせ、書いた子から黒板にネームプレートを置き立場をはっきりさせました。始めは、賛成派4人、反対派26人でした。
賛成派の子たちの意見は、「預かってくれる人がいないから仕方ない。」「出ていくと自分も死んでしまう。」という意見でした。
反対派の子たちの意見は、「子犬がかわいそう。」「そんな施設に入れるくらいなら逃してあげた方がいい。」という意見でした。
そこで反対はの子たちに、
「逃すならどこに逃すの。」
と聞いてみました。市街地に逃すと、市の職員に捕まって、結局施設へ送られてしまうことを伝えました。
すると子どもたちの中から、
「山へ逃せば餌もあるから生きていける。」
という意見が出てきました。そこで子どもたちにこんな写真を見せました。

これは山に逃した犬の姿です。餌はこれまで人間にもらっていたため自分で取ることができません。さらに、元々山に住んでいた生き物にいじめられ、ぼろぼろになってしまいました。山に逃すと、こんなぼろぼろになって死んでしまいます。こんな事実を伝え、再度賛成・反対を聞いてみました。すると、賛成18人、反対12人と人数が変わってきました。
次にお互いに意見を交換してみることにしました。
賛成派から反対派の子たちへの意見は、「ぼろぼろになって死んでしまう方がかわいそう。」「あきほさんも生きていかなくてはならない。二人そろって死んでしまう。」「施設に入ればもらってくれる人がいるかもしれない。」という意見が出ました。
反対派から賛成派の子たちへの意見は、「あきほさんのために殺すのは子犬がかわいそう。」「施設に入ってももらってくれる人がいなければ死んでしまう。」「山なら自分で生きられるかもしれない。」という意見が出ました。
最後にどちらに賛成かを聞くと、賛成派20人、反対派10人になっていました。わたしのクラスでは、「悲惨な最後を迎える」よりも、「苦しまない最後」という考えが強かったようです。
話し合いの後にこんな数字を見せました。私の県での「殺処分」の数です。
平成30年度 犬17頭 猫527頭 だいぶ減ってきてはいます。
しかし5年前には、
平成25年度 犬216頭 猫3136頭 です。この数字を示すことも子どもたちにペットの命を考えさせる一助になると思います。
ジレンマ教材で話し合いその3 どんな生き方がいいか話しをする
最後に子どもたちに、
「あなたがペットを飼うことになったらどんな風に飼いたいですか。」
と尋ねました。子どもたちは自分の思いを込めてワークシートに書き込んでくれました。
「ペットを飼ったら最後まで飼いたい。」
「ペットを飼っても途中で捨てない。」
という思いがたくさん出てきました。今回は2つに別れ話し合いましたが、本当は子どもたちの中にはこの思いがあったようです。「かわいいから飼う」だけでなく、「最後まで飼う」ことも大切であることを伝え授業を終えました。
まとめ
いかがだったでしょうか。子どもたちの振り返りを見ると、ペットを飼うということは「命を飼う」ということであり、人間の行動一つでペットが幸せになるか不幸せになるかが決まるということがわかったのではないかと感じています。道徳の授業で「生命尊重・自然愛護」を取り扱う際、試していただけたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。