小学生、3年生国語「ちいちゃんのかげおくり」の話し合いは心情曲線で!実際に行った発問を紹介します!

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小学校3年生の物語文の中に、「ちいちゃんのかげおくり」があります。戦争教材ですが皆さんはどのように授業を進めていますか。今回は「ちいちゃんのかげおくり」を「心情曲線」を使って行った授業を紹介していきます。これから授業を行おうと考えている方の叩き台にしていただけたらと思います。

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目次

「ちいちゃんのかげおくり」の心情曲線は、「ちいちゃんの気持ち」を「悲しい」で追う

「ちいちゃんのかげおくり」のクライマックスの場面は、ちいちゃんが防空壕の中で一人家族に会いたいと思い続ける場面です。家族に会いたいと思いながらも会えずに死んでしまうときの、「ちいちゃんの気持ち」を考えます。ちいちゃんは物語の前半では、家族一緒に「かげおくり」をします。そこはとても嬉しい気持ちです。一方、終盤には戦争に巻き込まれ、家族と離れ離れになるだけでなく、小さなちいちゃんも死んでしまいます。そこで心情曲線は、「悲しい」「嬉しい」の二つの気持ちに対して書き込むワークシートにします。使った心情曲線は以下のファイルです。上のスペースには教科書の本文を貼り付け、文章のどこで曲線が変化するかを曲線で示していきます。

 

ちいちゃん 心情曲線 

 

ちいちゃんのそれまでの行動を見ていくと、クライマックスで予想されるちいちゃんの気持ちは、「家族に会いたい。」ですとか、「またみんなでかげおくりをしたい。」という気持ちだと思います。物語の始めからちいちゃんは、家族でかげおくりをするなど、家族に対して幸せな感情を抱いている様子が伝わってきます。そんな中、まぶしい光と共に、家族と再会します。ちいちゃんはこの時どんなことを思っていたのか、そんなちいちゃんの思いを、子どもたちに心情曲線のワークシートに書かせ、確認します。心情曲線で分かれたのは、A「『こんなところにいたから会えなかったのね』で嬉しい」に上がる曲線と、B「『小さな命が空に消えました』で悲しい」に下がる曲線です。

 

主発問は、「ちいちゃんの気持ちの曲線はどれが正しいか」で話し合う

 

ちいちゃんの家族に死んでしまう前までの「悲しい」気持ちを確認した上で、クライマックスの話し合いをしていきます。ここでは、ちいちゃんは体力も限界に達し意識が朦朧として家族の幻覚を見ます。その時ちいちゃんの気持ちに変化はあったのか子どもたちに問うことで話し合いをしていきます。
2つの考えの中で、どちらの答えが正しいと思うか、自分の考えをノートに書きます。書き終わったら、A 、B のどの考えかはっきりさせるため、黒板にマグネットを貼って立場をはっきりさせました。

次に、逆側の考えが適切でない理由をノートに書きます。正しい理由と適切でないと思う理由を、教科書の文章を証拠にして書けたら話し合いを始めます。

 

ちいちゃんの気持ちに変化が見られたのは、「家族に会えた時」か「小さな命が空に消えた時」かを話し合う

 

2つの意見について話し合いを行います。ちいちゃんの「悲しい」の気持ちが変化したのは、A「家族に会えた時」か、B「小さな命が空に消えました」のどちらの場面かです。

Aでは、賛成意見として、「ちいちゃんは家族に会いたくてずっと願っていた」「小さなちいちゃんがやっと家族に会えた」「これからはずっと一緒にいられる」という意見が出てきました。家族に会えたことで、自分の思いは叶った、また家族で一緒にいられるから嬉しいという意見です。

 

 

一方Bの賛成意見では、「『小さな一つの命が空に消えました』は、ちいちゃんが死んでしまったということ。死んでしまったら悲しい」という意見や、「ちいちゃんが死んでしまって家族に会えたということは、家族も死んでしまっている。それは悲しい」という意見が出ました。

 

 

Aに対する反対意見として、「ちいちゃんは生きて家族と会えていない。ちいちゃんも家族も死んでしまったということ。もっと長く生きれたかもしれないのに死んでしまって嬉しいと思うのか。」や「家族そろって生きていられる方が嬉しい。」という意見が出ました。

Bに対する反対意見としては、「ちいちゃんはこのままでは、家族に会えなくても死んでしまった。それでもいいのか。」「もし家族に会えなかったらもっと悲しいのでは。」「家族に会えたのだからちいちゃんは嬉しいのでは。」という意見でした。

Bの意見の子たちに、「ただ家族に会えて幸せ」で終わってしまわないように、教師からこんな揺さぶりをかけてみました。

(教師)「ちいちゃんの体は今どこにあるの。」

(子)「防空壕の中。」

(教師)「暗い防空壕の中で、一人で倒れているんだよね。それって本当に嬉しいのかな。」

これは、ちいちゃんがまるで防空壕の中から空に浮かび上がって家族に会えたように感じている子たちに、実際の様子を想像させるために話しました。ちいちゃんは空を飛べるわけはなく、意識や魂が空を飛んでいるだけで、実際は暗い防空壕の中で一人死んでしまっているのです。このお話を聞いて、少し考えを揺さぶられた子たちもいました。

立場を決めて話し合いを行ったので、最後には解を示しました。答えはBです。納得できない子たちにこんな質問をしてみました。

「ちいちゃんと、その後登場するちいちゃんと同じ年ごろの子どもたち、皆さんはどちらになりたいですか。」

当然子どもたちは、後者の子どもたちを選びました。それが答えです。小さなちいちゃんは、死んでしまっているのです。生きて家族に会える方が幸せに決まっています。

一方、Aと答えた子たちの、「ちいちゃんの願いが叶った」もとても深い読み取りだと思いました。なぜなら、最後にちいちゃんは「花畑の上を笑いながらかけていく」からです。そこにはちいちゃんの、「家族に会いたい」というたった一つの願いが叶った瞬間があります。小さなちいちゃんが死んでしまうほど苦しい中で、願いが叶ったその瞬間の嬉しさを読み取れた子たちを褒めて授業を終えました。

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか。今回「心情曲線」にして立場を決めて話し合うことで、子どもたちは教科書の中身をよく読み、自分の思いを込めた読み込みができるようになったのではないかと感じています。感想を交流しあうことも大切ですが、深い読み取りのために、教科書を元に話し合うことも大切な技能です。どんな風に授業を進めようか悩んでいる方にとって、今回の授業の流れを叩き台にしていただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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