小学校3年生の物語文の中に、「もうすぐ雨に」があります。皆さんはどのように授業を進めていますか。今回は「もうすぐ雨に」を「心情曲線」を使って行った授業を紹介していきます。これから授業を行おうと考えている方の叩き台にしていただけたらと思います。
目次
「もうすぐ雨に」の心情曲線は、ぼくの「動物の気持ちがわかる」で追う
「もうすぐ雨に」のクライマックスの場面は、ぼくとトラノスケが心を通わせる場面です。動物の言葉がわからなくなった時のぼくの、「動物の気持ちがわかるかどうか」を考えます。
なぜぼくの「動物の気持ちがわかるかどうか」かと言うと、このお話では、始めにぼくが、「動物の言葉がわかったらいいのになぁ。」とつぶやくところから始まります。つまり「動物の言葉がわからない=動物の気持ちがわからない」がスタートになります。その後、「チリン」の音と共に動物の言葉がわかるようになります。しかし、最後には「チリン」の音がなくなると同時に動物の言葉が聞こえなくなります。動物の言葉が聞こえなくなったぼくが、最初の段階に戻ってしまったかというとそれは違っていて、ぼくは言葉がわからなくても気持ちがわかるようになっています。そこがこのお話の主人公である「ぼく」の心の大きな変化です。そのため、「動物の気持ちがわかる」かどうかを心情曲線で表現していきます。
そのためこの話では、「ぼく」を「中心人物」として考えていきます。そこで心情曲線は、「動物の気持ちがわかる」「わからない」に対して書き込むワークシートにします。使った心情曲線は以下のファイルです。上のスペースには教科書の本文を貼り付け、文章のどこで曲線が変化するかを曲線で示していきます。
ぼくのそれまでの行動を見ていくと、予想される気持ちは、「動物の気持ちがわかる。」という気持ちだと思います。言葉がわからなかったために動物の気持ちがわからなかったぼくにとって、動物の言葉がわかるということは、何を思っているのかはっきりとわかることができるということです。
そんな中、大雨と共に「チリン」の音が聞こえなくなり、動物の言葉も聞こえなくなってしまいます。そんなとき、家に帰ってきたトラノスケに会います。話しかけても言葉が伝わらないぼく。ぼくはこの時どんなことを思っていたのか。そんなぼくの思いを、子どもたちに心情曲線のワークシートに書かせ、確認します。心情曲線で分かれたのは、
A「なんて言いたいのか、わかったよ。」
の部分から上に上がる曲線と、
B「つばめが、・・・何も言わなかった」
の部分から下に下がる曲線です。
「もうすぐ雨に」の主発問は、「ぼくは動物の気持ちがわかるか」で話し合う
ぼくの動物の言葉が聞こえなくなった後の、「動物の気持ちがわかる曲線」を確認した上で、クライマックスの話し合いをしていきます。ここでは、動物の言葉が聞こえなくなった後、ぼくの気持ちに変化はあったのか子どもたちに問うことで話し合いをしていきます。
2つの考えの中で、どの答えが正しいと思うか、自分の考えをノートに書きます。書き終わったら、A 、B のどの考えかはっきりさせるため、黒板にマグネットを貼って立場をはっきりさせました。
ぼくの「動物の気持ちがわかる曲線」に見られる変化は、「言葉がわかる時と同じ」か「言葉がわかる時よりわからない」かを話し合う
2つの意見について話し合いを行います。ぼくの「動物の気持ちがわかる曲線は、
A「言葉がわかる時と同じ」か、
B「言葉がわかる時よりわからない」
のどちらかです。
Aでは、賛成意見として、
「トラノスケに、『なんていいたいのかようく、わかったよ。』と話しかけている。「わかった」は「理解する」という意味だからわかっているから」や、
「『音はならない、でも』という文章から、音は鳴らなくてもわかっている」
という意見が出てきました。
一方Bの賛成意見では、
「『口をきかなかった』=なんて言っているのかわからない。それは考えているということ」や、
「『なんて言いたいのか』は言ったことではないから想像。」という意見が出ました。
Aに対する反対意見として、
「なんて言いたいのかは、言いたいことだから、言ったことではない。だから気持ちがはっきりわかるとは言えない。」や
「実際に『ご用は全部済んだか。』にトラノスケは無視しているから返事がないからわからない。」
という意見が出ました。
Bに対する反対意見としては、
「『わかったよ。』と言っているということは、言葉がわからなくても気持ちがわかるということ。」や
「想像できるようになったからそれはわかるということ。」
という意見が出ました。
立場を決めて話し合いを行ったので、最後には解を示しました。答えはBです。なぜなら、『なんていいたいのか、わかったよ。』は想像であるため、動物の言葉がわかっていた時に比べ、はっきりと動物の気持ちがわかるとは言えないからです。
一方、Aと答えた子たちの、「わかった」=「理解する」を辞書で調べ、「音が鳴らなくても動物の気持ちが考えられる」と答えたことも、とても深い読み取りだと思いました。なぜなら、ぼくは明らかに最初に比べて動物の気持ちが考えられるようになっているからです。トラノスケに対して、「暇」だと考えていたぼくは、最後には、「用は済んだか。」とトラノスケの行動を気遣っています。それこそこのお話でのぼくの成長 であるからです。そんな読み取りができた子たちを褒めて授業を終えました。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回「心情曲線」にして立場を決めて話し合うことで、子どもたちは教科書の中身をよく読み、自分の思いを込めた読み込みができるようになったのではないかと感じています。感想を交流しあうことも大切ですが、深い読み取りのために、教科書を元に話し合うことも大切な技能です。どんな風に授業を進めようか悩んでいる方にとって、今回の授業の流れを叩き台にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。