小学校で行われている授業は、教師が発問し、児童がそれに答えることで進んでいきます。皆さんはどんな発問をしていますか。今日はその発問に、「立場をもたせる」ことを意識してみてはどうでしょうというお話です。立場をもたせるとはどんなことなのか。また、立場をもたせることでどんないいことがあるのか。もたせないとどんな弊害があるのかについて考えていきます。今後の指導の叩き台にしていただけたらと思います。
目次
授業の発問で、「立場をもたせる」ってどんなこと
まず、「立場をもたせる」とは一体どういうことなのかを説明します。例えばこんな発問をします。
「ごんはこのときどんな気持ちだったのでしょう。」
この発問に答えると、様々な答えが返ってきます。例えば、
A「兵十に気持ちが伝わらなくてかわいそう。」
B「兵十に気持ちが伝わってよかった。」
これらを全て正解にすると、児童の中で「深い読み取り」が生まれません。そこでこれらの意見が出てきたときに、加えて発問します。
「AとBではどちらがごんの気持ちにより近いでしょうか。」このように発問すると、AかBか自分の意見を決めることになります。ここで子どもたちの中では、どちらかに立場を置くことになります。これが「立場を決める」ということです。
授業の発問で、「立場をもたせる」とどんないいことがあるの?
続いて、「立場をもたせる」ことでどんないいことがあるかについて考えいきます。先ほどの問題で、立場をもたせることをしました。立場をもてば気になるのが正解です。当然この問題にも正解があります。「より近いのは。」と聞かれれば、より近いのが正解になります。正解があるとわかれば、あとは正解するために学習します。国語では、教科書の中に答えがあります。教科書をよく読み、わからない言葉は辞書で調べ、正解のために証拠を見つけていきます。
立場を決め、証拠を見つけたら、次はその内容を発表していきます。自分の考えを発言すると、聞いている反対の意見の人は、その理由に反論したくなります。一方、反対の意見の子の中にも、「自分の考えよりあちらの考えの方が正しいかも。」と改めて考え直す子も出てくるかもしれません。一つの発問から、より深く考えていることがわかります。
最後に答えを出します。この発問では、「おまえだったのか、ごん、くりをくれたのは。」という兵十のセリフがヒントになります。「おまえだったのか。」の「か」が、「詠嘆」か「疑問」かで分かれるからです。この場面の兵十のセリフは、「疑問」です。なぜならその後ごんがうなずいているからです。よって正解は、Bの「気持ちが伝わってよかった。」になります。教科書を読む時に、登場人物のセリフの一文字にこだわって読み取る機会はなかなかありません。しかし、作者の思いがつまった一文字に触れることができるのは「立場をもたせる発問」をしたからです。
授業の発問で、立場をもたせない弊害とは
では、立場をもたせない場合、どんな弊害が起きるでしょうか。もし「より近いのは。」と聞かなければ、よく教科書を読み、わからない言葉を辞書で調べる作業をしたでしょうか。答えは「しない」です。子どもは必要のないことまで進んで取り組もうとはしません。「ごんはこの時、どんな気持ちだったのでしょう。」の答えが様々に分かれた際、「どれも正解だね。」としてしまったら、子どもはより深く読み取ろうとはしません。先ほどの、兵十のセリフの一文字まで読み取り、気づく子は出てこなかったでしょう。
「国語には正解がないから、どれもいい読み取りとして認めてあげる」なんてことが昔から言われていますが、これは間違いです。国語にもしっかりと答えはあります。答えが無ければ、テストで何を書いたって正解になるはずです。それなのにテストではしっかりと✖をつけています。それは聞かれていることを正確に読み取れていないからです。
答えがないというのは、読み取りではなく、作品に対する個人の感想です。作品を読み、どんな感想をもっても個人の自由ということです。「ごんぎつね」を「悲しい作品」と思う子もいれば、「心がつながってよかった作品」と思う子がいてもいいのです。しかし、読み取りは正しくなくてはいけません。文章にあることを正確に読み、聞かれていることに正確に答えられなければ、テストで点数が取れないからです。ここを分けて考えることがとても大切です。
まとめ
いかがだったでしょうか。立場をもたせることで、学習により深まりが生まれることがわかっていただけたのではないかと思います。これは国語だけではなく、どんな教科でも大切なことです。いつでも「立場をもたせる」ということを意識して発問をしていくことが、学習の深まりにつながります。また、実践してみるとわかりますが、立場をもたせると、子どもが生き生きと活動します。自分の答えが正解なのか気になりますし、相手の考えも気になります。立場が決まることで「答え」という関心が生まれるからです。が関心ないということは「無関心」ということです。授業に無関心な子がいなくなるためにぜひ「立場をもたせる」授業を進めてもらえたらと思います。なお、これまで話したことは、下の著書を参考に、私が実践を通して感じたことをお話ししています。もし興味がある方は、下の著書をお読みください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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